ジューダス・プリースト裁判


 1985年、アメリカで2人の少年が自殺を図り、うち1人が即死するという事件が起きた。もう1人は重傷を負ったが死は免れ、3年後にドラッグが原因で死去している。事件から5年後の1990年、少年の遺族は自殺の原因はイギリスのヘヴィメタルバンド「ジューダス・プリースト」のアルバム『ステンド・クラス』にあるとする訴訟を起こした。



 1985年12月23日、アメリカのネバダ州リノでジェームズ・バンス(20)とレイ・ベルクナップ(18)が、部屋で音楽を聞いているうち何かに目覚めたように立ち上がり、「do it!!」と叫びながら父の部屋に飾ってあったショットガンで自殺を図った。ベルクナップは即死、バンスは顎をなくしたが一命をとりとめた。

 当時、2人はジューダス・プリーストが1978年に発表した4作目のアルバム『ステンド・クラス』に収録されている「ベター・バイ・ユー、ベター・ザン・ミー」という曲を聴いていたことから、依頼された専門家がその曲の解析を行った結果、ある部分を逆回転させると「do it!!(やれ)」と言っている部分が判明した。原告側はその曲の中に「Do it!!」というサブリミナル・メッセージが入っており、それが自殺の原因になったと荒唐無稽な理由で裁判を起こした。しかし、被告側の証人となった臨床心理士は、少年達がかねてから暴力的で、鬱の傾向があり、薬物乱用の既往もあったと証言した。最終的にサブリミナル・メッセージの存在は裁判で否定され、本作は少年の自殺とは無関係という判決が出て、ジューダス・プリーストの勝訴で終わった。