ルーペ・ヴェレス

ルーペ・ヴェレス(Lupe Velez 1908年7月18日生)
 [メキシコ・女優]



 映画スターに憧れメキシコシティから10代でハリウッドに上京し、映画『ガウチョ』でデビュー。人気スターの座につき、さまざまな名男優と交際して華やかな生活を送った。しかし勝手気ままで嫉妬深い性格だったため、結婚、離婚騒動を巻き起こすなどスキャンダルにも事欠かなかった。このスキャンダルのため女優としての格を下げてしまい、やがてはB級喜劇映画専門の女優に落ちぶれる。

 しかし過去の栄光が忘れられない彼女は、返すあてのない借金をくり返して豪華な生活を送った。そしてある新進男優の子どもを身篭ったが、相手は中絶を要求。これに落胆した彼女は「お腹の赤ちゃんを殺して生きるくらいなら自分が死んだほうがまし」と死ぬ覚悟を決め、友人を呼び寄せて、つけで数十本のキャンドルに火を灯すという最後の大見栄をはった豪華な晩餐を開いたその夜、大量のセコナール(睡眠剤)と1杯のブランデーを飲み干してベッドに入った。秘書が朝になってヴェレスの遺体をベッドの上で発見した。

 死体となった彼女には細身の美人で売り出した当初の面影はなかったが、グラビア撮影時のような完璧なメイクを施し、まるで映画のワンシーンを切り取ったのと勘違いするほど美しい死顔であった。彼女が最後に遺した言葉は、「人生に疲れた。戦うのはもう、うんざり。メキシコでの子供時代からずっと戦い続けだったから」だった。葬儀はロサンゼルスのフォレスト・ローン・メモリアル・パークの霊安室で執り行われ、その後ヴェレスはパンテオン・シビル・デ・ドロレス・セメタリーに埋葬された。

 1944年12月13日死去(享年36)