江口きち

江口きち(えぐちきち 1913年11月23日生)
 [歌人]



 群馬県出身。父は博徒で生活能力がなく、兄は幼時の脳膜炎の後遺症で知的障害があった。母が飲食店を切り盛りして三人の子どもを育てた。川場村尋常高等小学校での学業成績は優秀だったが進学は諦め、沼田の郵便局に勤めるが、4ヶ月で母が急逝したため帰郷し家族の世話のために家業を継ぐ。

 傍ら、独学で短歌を学び、1930年、小学校の担任教師のすすめで『女性時代』の誌友となり短歌を発表。1937年、群馬県歌人協会へ入会する。1938年、女性時代社の例会に出席、群馬県歌人協会刊『昭和13年版年刊歌集』に投句する。

 同年12月、生活苦と恋の悩みにより、知的障害者だった兄を道連れにして服毒自殺を遂げた。複雑な生い立ちから生まれた歌から石川啄木になぞらえられ、「女啄木」と呼ばれた。ただし作風は啄木とは大きく異なり万葉調であった。

 1938年12月2日死去(享年25)