小雪

『絶唱』より



小雪(演者:山口百恵)


 山番の娘・小雪は、山陰地方で名の通った大地主・園田家の一人息子で大学生の順吉と恋に落ちるが、順吉の父・惣兵衛に身分が違うと反対され、二人は駆け落ちした。

 貧しくとも幸福な二人の生活が続いていたが、順吉のもとに召集令状が届く。山の木挽歌を、どこにいても毎日決めた時間に二人で唄うことを約束して、順吉は戦地へ向ったが、戦争が長期化すると、いつしか順吉からの便りが絶えた。

 二人で約束した木挽歌を唄う事だけが心の支えとなっていた小雪は、結核で倒れても木挽歌を唄う事だけは欠かさなかったが、体力が限界となり「あの人の足音が聞こえる……山に帰りたい」と言い残して亡くなった。

 小雪が死んだちょうどその日に復員して来た順吉は、結核に冒され死の床にあった小雪の姿を見て慟哭し、死後結婚式を行った。