イルゼ・コッホ

イルゼ・コッホ(Irse Koch 1906年9月22日生)
 [ドイツ・女性看守]



 夫が収容所における所長の地位にあることを楯に囚人に対して虐待行為を行った。収容所の構内で馬を乗り回し、囚人に鞭を打ったり、死んだ囚人の皮膚でランプシェードやブックカバー、手袋を作るなどの常軌を逸した行動のみならず、刺青をしている囚人がいるとその囚人を注射で薬殺してから皮を剥いで収集したりさえした。このため、囚人らや働いていた親衛隊員達から「ブーヘンヴァルトの雌犬」と呼ばれたものと当時の声が残されている。

 さらに、彼女が工作用に人皮を入手できた理由はブーヘンヴァルト勤務のナチスの医者が愛人であったためである。このためよくイルゼは好色家・色情狂として噂される。また、飼い犬を女囚にけしかけて遊んだりもしていた。また、捕虜虐待の噂が絶えなかったため、ポルノ映画『イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験』のモデルとなった。ただし、あくまで映画なのでかなり脚色されている。

 1943年に夫が収容所における悪事で告発されたとき、イルゼも横領着服容疑で裁判にかけられたものの、証拠不十分で無罪となる。一方、夫は死刑を宣告され1945年4月に処刑された。その後、ルートウィヒスブルクにいた家族と一緒に生活していたが、彼女は1945年6月30日にアメリカ合衆国によって捕えられた。

 1947年、アメリカ占領軍によって逮捕された彼女は、終身刑を言い渡されるも証拠不十分で懲役4年に減刑され、1949年に恩赦で釈放されるも、西ドイツの司法当局はこれを許さず、ドイツ国民への犯罪行為として再度イルゼを告発し、1951年に終身刑を言い渡した。イルゼはあくまで無罪を主張し、国際人権委員会に告発するも相手にされず、1967年息子に「死だけが救い」の文章を残して獄中で首吊り自殺した。

 1967年9月1日死去(享年60)