京都アニメーション放火殺人事件

京都アニメーション放火殺人事件(2019年7月18日発生)
 [アニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(地上3階建て)に男が侵入し、ガソリンを撒いて放火したことで、男を含む71人が死傷した。]

 1981年に創業した京都アニメーションは「京アニクオリティー」と呼ばれる高い品質によって国内外で人気を得ていた。だが、事件の数年前から作品への批判や社員への殺害予告が相次いでおり、その都度警察や弁護士へ相談し、対処していた(今回の事件との関係性については不明)。同社は以前から防火・防災に熱心に取り組んでおり、第1スタジオは平成26年度の消防記念日(2015年3月7日)に伏見消防署長表彰を受けている。また、2018年10月17日に消防法に基づいて行われた立入検査でも不備はなく、同年11月14日の訓練でも配属社員の9割に当たる70人が参加していた。その一方、書籍や机、荷物が過密状態で積まれていたという証言もあった。

 2019年7月18日京都アニメーション第1スタジオではNHKによる取材が午前11時より予定されていたが、10時31分頃、第1スタジオに男が侵入、バケツ2個で10リットルから15リットルのガソリンを建物1階に撒き、現場にいたスタッフ数名に暴言を叫びながらライターで着火、爆燃現象が発生した。女性スタッフはこの際にガソリンをかけられており、全身に大火傷を負っている。また、着火時には「ドーン」という爆発音が周囲に響いたという。


 第1スタジオには従業員70人がいたが、そのうち69人が被害を受け(死亡36人、負傷33人)、40代男性1人のみ無事だった。死亡した犠牲者の中には木上益治、武本康弘、西屋太志、池田晶子などの著名なアニメーターも含まれていた。

 死者の内20人は、3階から屋上へ上る十数段の階段で折り重なるように倒れた状態で発見された。屋上階段は煙がたまりやすく、目を開ける事すら困難だったと推測されている。20人の内、1人は3階と踊り場の間の階段で倒れ、踊り場から上の階段で14人が折り重なるように倒れており、5人は屋上扉の手前で発見された。また、2階の犠牲者11人は特定の窓の付近で固まって倒れており、生存者はこの窓が完全には開かず、熱で割れるまで脱出できなかったと証言している。

 犯人の男は自身の衣服に引火した状態で逃走し、現場から南へ100メートルの京阪電鉄六地蔵駅付近の路上で追いかけてきた2人の男性社員に取り押さえられ、京都府伏見警察署員に身柄を確保された。この時、男のズボンに火がついていたので、近隣住民が散水ホースで消した。逮捕時に、「ガソリンを撒いてチャッカマン(多目的ライター)で火をつけた」と供述。他にも「(声をかけた警官に対して)触るな。おれの作品をパクりやがったんだ。社長を呼べ。社長に話がある」「ここで倒れているわけにはいかない。これから宇治の本社に行かないといけない」などと叫んでいたという。のちに事情聴取が行われた際、男は容疑を大筋で認め「どうせ死刑になる」「(犯行動機は)自分の小説を盗用されて、京アニが許せなかった」と供述した。

 その後の捜査で同姓同名で同住所の人物から、過去に京都アニメーションが募集している「京都アニメーション大賞」に学園ものの長編と短編の小説2点を応募していたことが確認され、1次審査を通過していなかった。