臼井儀人

臼井儀人(うすいよしと 本名:臼井義人 1958年4月21日生)
 [漫画家]



 静岡県生まれ。1977年に埼玉県立春日部工業高等学校を卒業後、アルバイトをしながらデザイン関係の専門学校に通学するが中退。

 1979年、広告関係の会社に入社。スーパーマーケットのPOP広告作成で生計を立てながら、出版社に漫画の持込をしていた。1987年、「だらくやストア物語」が双葉社・『週刊Weekly漫画アクション』新人賞佳作に入賞し漫画家デビュー。

 1990年8月、『週刊Weekly漫画アクション』にて「クレヨンしんちゃん」の連載が開始。1992年にテレビ朝日系列にてアニメ化、1993年にアニメ映画化され社会現象を起こす大ブームとなる。臼井はいくつかの主題歌や挿入歌の歌詞も提供しているほか、劇場版数作品には本人役での出演もしている。また、増刊号として同作品を表紙および巻頭作品として扱った4コマ漫画雑誌『クレヨンしんちゃん特集号』も毎月出版された。

 2009年9月11日、かねてより登山が趣味であった臼井は妙義荒船佐久高原国定公園・荒船山へ単身で日帰り登山に行くと言って、早朝自宅を出発。電車を乗り継ぎ、下仁田駅からタクシーで登山口の内山峠へ向かい、そこで目撃されたのを最後に連絡が取れなくなった。翌朝になっても帰宅しなかったことから、家族によって埼玉県警春日部警察署へ捜索願が出された。

 9月19日になり、荒船山の岩壁にておよそ高さ120mの崖下に転落している男性が登山客によって発見され、佐久消防署に通報された。現場の状況から行方不明となっている臼井本人であることが疑われ、9月20日に群馬県警察の捜索隊が現場へ直行し、男性を収容して下仁田警察署へ搬送。家族関係者により遺体の確認作業が行われ、最終的には歯型が決め手となり、収容された男性が臼井儀人本人であることが判明した。

 当地での警察による検視の結果、死因は全身強打による肺挫滅であり、死亡推定時刻は11日午後頃と推定された。滑落現場は過去に事故例がほとんど無いことから、事件性の有無についても捜査が行われた。

 ネット上ではすぐさま話題となり、鬱病などによる自殺説が流布された。そもそも、元々はファミリー向けのギャグマンガであったはずの『クレヨンしんちゃん』において、数年前からは気の毒で目を背けたくなるような展開があり、臼井の精神状態が気に掛けられていた。その展開とは、主人公である野原しんのすけが通うアクション幼稚園の、まつざか梅先生の恋人がアフリカでテロに遭い死亡してしまうという物騒なものだった。しかもこの回は恋人の訃報を知ったまつざか先生が「もうすぐあなたの所へ行くからね」と意味深に呟くシーンで終わっている。また、臼井は新興宗教の熱心な信者で、家族間で宗教上の対立による不和が生じており、それが原因で自殺に至ったのではないかといった噂もあった。

 その後の調べで、現場から発見されたデジタルカメラに最後に撮影されていた画像が崖の下を覗き込むように撮影されたものであったことが判明した。このことから事件性はなく、写真を撮ることに夢中になるあまり、誤って足を滑らせて転落したのではないかと報じられた。写真のタイムスタンプなどから、最後の写真は9月11日午後0時20分頃に撮影されたと推定されている。

 密葬が23日、キリスト教形式で春日部市の斎場でしめやかに営まれ、親族や双葉社関係者ら約30人が参列したが、遺族の意向で報道陣は完全シャットアウト。遺影や位牌はなく、遺族も関係者に徹底ガードされる厳戒態勢の中、臼井は荼毘に付された。

 2009年9月11日死去(享年51)