ブライアン・ウェルズ

ブライアン・ウェルズ(Brian Douglas Wells 1956年11月15日生)
 [アメリカ・ピザ配達人]



 2003年8月28日、ペンシルバニア州のピザ店でキャリア30年のベテラン店員のブライアン・ウェルズは、13時47分に配達に出かけた後の14時20分、街にある銀行へ行き、窓口の女性に手紙を渡し、杖を改造したライフルを突き出して25万ドルを渡すよう要求したが、田舎の銀行には8000ドルしかなく、その紙幣を手に銀行から逃亡した。ブライアンはなぜかハンバーガーショップに立ち寄り、花壇の中を探り再び逃走。しかし通報を受けた警察に14時32分に包囲され手錠をかけられた。

 彼は逮捕されたが、首輪を指差し、警察官に自分は時限爆弾を仕掛けられた被害者であると主張し、外す様に頼んだ。警察は狂言かと疑ったものの、彼の話しぶりから真実を感じ取り、爆弾処理班を呼んだ。この時の様子は、現場に駆けつけたカメラマンによりテレビで生中継された。停車するパトカー数台に囲まれ、後ろ手に手錠をかけられたブライアンが路上に座り込み、離れたところから警察官が拳銃を構えて彼を監視していた。

 ブライアンは「タイマーの音がする!」「爆弾の処理班はまだか、もう時間がないんだ!」「どうして見ているだけで、誰も助けてくれない?」と訴えたが、15時18分「ピザ屋の店長に連絡させてくれ」という言葉を最後に爆弾が爆発し、心臓上部に穴が開いて即死した。時限爆弾の設定はわずか50分で爆弾処理班到着3分前だった。彼のTシャツには「GUESS(何だと思う?)」と挑発的な一語が手書きされていた。

 事件の捜査はFBI主導で行われ、最大の手がかりはブライアンの持っていた犯行指示書とも言える9枚の紙。しかし犯人グループがどこでブライアンに接触したのか不明だった。ピザ屋の注文電話がかけられた公衆電話付近を中心に聞き込み、ブライアンの家も調べられたが証拠品は全く見つからなかった。ブライアンの身辺調査も行われたが結果はシロ、捜査は難航した。一時は迷宮入りとも言われたが、4年後の2007年7月、事件の主犯格とされる女が起訴された。内縁の夫を2人も射殺した来歴を持つ彼女は、ブライアンと電気配線工の男ともう一人の男の計4人でこの強盗を計画。「発明おじさん」の異名を持つ配線工の男に首輪爆弾を作らせ、それを配達途中だったブライアンに偽物と騙して装着させ、強盗に行かせたと見られている。

 しかし、これは1人の男による供述に過ぎない。というのも、配線工の男は2004年7月に急性白血病で死亡。主犯格の女も無罪を主張、精神鑑定を受けている。配線工が主犯説もあり、真相は藪の中である。

 2003年8月28日死去(享年46)