マーシャル・アップルホワイト

マーシャル・アップルホワイト(Marshall Applewhite 1931年5月17日)
 [アメリカ・宗教団体教祖]



 テキサス州生まれ。当時、音楽教師だったマーシャル・アップルホワイトは、スピリチュアルに関心を持っているという共通点から、看護婦のボニー・ネトルス(1928年生)と知り合った。二人は、みずからをヨハネの黙示録11章3節に記された「二人の証人」になぞらえた。当初は精神的な書籍を扱う書店の経営を行ったがうまくいかず、二人は互いの家族を捨て、アメリカ国内を移動しながらその信仰を宣伝することにつとめた。

 アップルホワイトは1970年代にカリフォルニア州サンディエゴを拠点とし、UFOを信仰する宗教団体「ヘヴンズ・ゲート(Heaven's Gate)」を創設。ニューエイジ運動から生まれたほかの新宗教と同様、かれらの信仰は、黙示録と救済の考え方を中心とするキリスト教の教義、進化論、他の世界(次元)への旅を題材とするSFを折衷したものであった。

 ヘヴンズ・ゲートの教義は、中世の修道僧と比較することができる。信者たちは物質的なものを捨て、非常に禁欲的な生活を送った。教団は強く連結し、すべてのものが共有されていた。アップルホワイトを含む6人の男性メンバーは禁欲的な生活をしやすくするために自ら進んで去勢を行った。資金面では、ハイアー・ソースという名称でウェブサイト構築のサービスを行って顧客から報酬を得ることで成り立っていた。

 ヘヴンズ・ゲートの信者たちは、地球はまさに「リセット」(一掃、一新、若返り)の時にあり、人が生き残るためには地球から旅立つことが唯一の道だと強く信じていた。かれらは、「人間」の肉体は「旅」の手助けをする乗り物に過ぎないとしていた。1997年のヘール・ボップ彗星出現の際にアップルホワイトは、ヘール・ボップ彗星とともにやってくる宇宙船に魂を乗せるためとして、1997年3月22~26日の間にカリフォルニア州ランチョ・サンタフェのアップスケールサンディエゴコミュニティにある賃貸住宅で38人の信者達と自殺を遂げた。

 自殺を行う前に、彼らは体を清めるためにいつものように柑橘類のジュースを飲んだ。死因はフェノバルビタールを混ぜたウォッカを飲み、頭からビニール袋をかぶったことによる窒息死で、発見時は顔と胴は四角い紫色の布で覆われていて、皆自分達の寝台にきちんと横たわった状態だった。全ての遺体のポケットには5ドル札1枚と25セント硬貨が見つかった。尚39の遺体は皆黒いシャツにスウェットパンツ、足には新品の黒と白のナイキ・コルテスの運動靴、腕には「ヘヴンズ・ゲート上陸班」とあて布のついたアームバンドといういでたちだった。この自殺はいくつかのグループに分かれて行われ、残った信者達はそのひとつ前のグループの後片付けを行うという段取りでおこなわれていた。アップルホワイトは、最後に死んだ四人のうちの一人であった。

 第一発見者は元信者の男性で、教団からお別れの手紙とビデオが送られてきたため、教団を訪ねたところ遺体を発見したという。お別れビデオには、信者たちが笑顔で「この日のために、みんなで頑張ってきた。次のレベルにいけて嬉しい」「死ぬのではない。家に戻るだけ」と語る姿が収められていた。

 1997年3月26日死去(享年65)