マービン・ヒーメイヤー(Marvin Heemeyer 1951年10月28日生)
[自動車修理業者]
2000年、コロラド州グランビーで自動車修理業を経営していたマービン・ヒーメイヤーは、市役所に対して「隣接する土地にコンクリート工場が建設されると、溶接工場の看板が道路から隠れる」と市の計画に反対した。「町の景観を守ろう」というマービンの建設反対運動には賛成する市民も現れ、2001年には市を相手取り訴訟を起こしたが、敗訴してしまう。それでも反対運動を続けたマービン達だったが、2年後の2003年に地元の新聞社・スカイハイニュース社がマービンを始めとする市民達を非難する記事を自社の新聞に掲載した為、反対運動に関わっていた市民達は次第に運動から離脱していき、婚約し既に同居していたマービンの恋人も、彼の元を去ってしまった。また、市がマービンの店舗を抜き打ちで立ち入り検査し、設備の不備を理由に罰金と業務改善命令を出した。マービンがこれに従わなかったため、市は彼の店に対し業務停止命令を下し、営業停止の処分とした。
結局市によってコンクリート工場は建設され、更に翌年の2004年3月にはマービンの父が死去し、マービンは孤立し追い詰められた。こうして、彼の復讐の計画が始められることとなった。手始めに、マービンはオークションに出品されていたコマツ製D355Aブルドーザーを購入。厚さ1cm以上の鉄板とコンクリートによって外装を補強した。更にビデオカメラとモニターを6台搭載し、密閉された内部からでも外部の様子が分かるようにした。こうして、2ヶ月後の5月末にキルドーザーが完成された。事件後に調べられたところによると、キルドーザーは内部からも溶接され、外に出られないようになっていたという。
マービンはまず、キルドーザーで隣接するコンクリート工場を破壊し、通報でかけつけたパトカーや停めてあった車を踏み潰しながらコンクリート工場を全壊させた後、更に市街地に向かって進んだ。対処が不可能だと判断した地元の警察は、特殊部隊であるSWATの派遣を要請した。その間にも、警官達の中にいた警察署の署長がキルドーザーに飛び乗ったが、既に溶接されていたため出入り口が見つからず、仕方なく脱出した。
市街地に到着したキルドーザーは、市役所を全壊させ、次にスカイハイニュース社の社屋を破壊し、続いて市長の自宅を粉砕した後、一旦郊外へと出た。その後、再び市街地に取って返し、工具店に突入した後、その倉庫内でラジエターの故障により身動きがとれなくなり、停止した。マービンは、SWATの隊員が周囲を取り囲もうと接近したところで、所持していた拳銃を使い、キルドーザー内部で自殺を遂げた。こうして、キルドーザーの破壊活動は同日中に終息を迎えた。